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新語辞典・カタカナ語辞典選び

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新語・カタカナ語辞典ってインターネットでいかにも売れそうにない物に思えるのですが、一応おすすめの選び方があるのでご紹介します。というか、これぐらいしか記事が書けそうになかったのですけど。

「インターネットで売れそうにない」というのは、goo辞書のような、ある程度新語・カタカナ語を網羅した辞書がウェブ上にあるからです。パソコン初心者向けにはやや詳しすぎる嫌いがありますけども、IT用語辞典 e-Wordsもたいへん重宝しています。(ここで『カタカナ語辞典を買わなくてすんだ!』という方、さよなら!)

お客さまがいなくなったと思いますが、続けます。

新語・カタカナ語辞典を購入される人は、いつもパソコンをつけてネットもつなぎっぱなしというタイプの人ではないのでしょう。パソコンを立ち上げるよりも、ちょっと辞典をめくりたい。あまり回りくどい解説はいらない。また「イミダス」のような、細かい流行語も網羅したような大げさなものではなくていい。そういった需要なのではないかと想像します。

新語・カタカナ語辞典の比較ポイント

辞典を作る側の立場を想像いたしますと、カタカナ語辞典って、作るの難しそうだと思うのです。普通の国語辞典というのはそれ以前の辞典を下敷きに作りますから("新明解"のような独自路線も中にはありますが)けっこう中身が同じで、説明文も似たり寄ったりです。しかし新語辞典カタカナ語辞典となると、かなり新しく文章を書き起こさなくちゃなりません。特にパソコン用語に関しては

  1. 情報の確かさ(技術系の知識)
  2. 辞書としての妥当さ(文章力)

両方がなくてはいけないわけです。カタカナ語辞典の編集者は、コンピューター全般にすごく詳しいのでしょうか?普通に考えると、辞典・辞書の編集者がコンピューターそのものにそんなに強そうだとは思えません。Windowsの使い方とかいうレベルではなくて、プログラムや機器の構造から知らなければならないのですから。

たとえコンピューターにすごく詳しい人だとしても、今度はその人の国語能力や編集のバランス感覚が、大きく辞典の出来を左右しそうです。実際はどうなのでしょう?想像になってしまいますが、両方に通じた人はそうはいないでしょう。うまくチームで連携して作っていくものだと思うのですが、悪いパターンは以下のような形になるはずです。

情報の信頼が置けない
(1)情報が古かったり、言葉の解釈が古いとか、(2)意味の取り方が狭すぎたり、要約はうまいけれど「例外」について説明のフォローがなかったり、(3)説明文の言葉選びが的確でないなど、筆者の予備知識の不足を感じると急に辞書全体が頼りなくなってしまいます。説明が、他の言葉への言い換えしか載っておらず(4)言葉の堂々巡りになるのも、チェックの甘さもあるでしょうが元々知識不足なのかもしれません。
なにが書いてあるのかわからない
(1)第一文がやたらと長かったり、(2)パソコン利用者でなく「作る側」の視点だけで書かれていたり、(3)あるものを説明する文章の中で、そのものより難易度が高い言葉を使ってしまう、その言葉を知りたい人の知識量が計れていないなど、本当に理解させようという気持ちが感じられないパターン。(4)説明している対象が「物」なのか「人」なのか「規格」なのか、そういう基本的な定義が抜けてしまうと大減点。

比較してみる単語

よく辞書を選ぶ時に「愛」という言葉を引くと、その辞書の特徴がわかって良いと言われます。

私がカタカナ語辞典で最初に引くのはインターネットです。これは「愛」ほどではないでしょうが、説明が難しいからです。

インターネットは元々パソコン通信の規格のひとつであり、もっといろいろ「ナントカネット」がある中での"インターネット"という名前のネットであります。つまり「ファミコン」という言葉のように、元々はゲーム機のひとつを指す固有名詞だけれど、あまりにも普及したので広く「家庭用ビデオゲーム機」の意味で普通名詞としても使われたというような、ふたつの意味を持つ言葉なのです。

元々の意味のインターネット(区別のためthe Internetとも言います)は、それまでの通信技術とどう違うのかという技術的視点の説明にならざるを得ず、インターネット以前のコンピューター通信を知らない初心者ががんばっても理解できるような話ではありません。後から生まれたインターネットの意味は世界規模の、すべてつながった、パソコンでも携帯でも見れる、つまり世界規模のコンピューター通信網ですが、漠然としたいろいろなイメージが加えられています。

これがインターネットの説明の難しさで、だからこそ辞典の特徴が出るのです。

(1)「ARPAnet」や「TCP/IP」といった言葉が出てくるパターン
先ほどの「あるものを説明する文章の中で、そのものより難易度が高い言葉を使ってしまう」パターンの典型ですが、元々の意味のインターネットを説明しようとするとこうなります。「インターネット・プロトコル(IP)による通信網がインターネット」という技術的な定義。古い辞典には、こうした解説しか載っていないものが多いです。
(2)「世界的なコンピューターのネットワーク」といった説明
現状の意味のインターネットの説明からはじまる辞典も増えているようです。ただ子供向けの辞書ならともかく、これだけで終わってしまうのはちょっと正確さを欠くように思えます。
(3)「ネットワークをつなぐネットワーク」といった説明
複数のコンピューターネットワークをつなぐ上位のネットが「インターネット」だ、としている辞典もあります。「internet」の語源を探るとそういう意味なのかもしれませんが、そういう定義であるかのような説明には疑問が残ります。説明のニュアンスによっては「それってインターネットっていうよりWAN(広域通信網)の説明じゃない?」と思えることもあり、この説明だけで終わっている辞書はあんまり信用しません。

私は(1)と(2)の説明文が両方ある辞書が好きです。この他にも、「ファイル」「ソフトウェア」「ISDN」や「ADSL」といった単語もよく知られているわりに説明が難しく、参考になります。自分にあっているな、と感じられる辞典を見つけられるのではないでしょうか。

実際に調べてみた

ええとそんなわけで大きな書店で手当り次第に立ち読みしてチェックしてみました(その程度の調査ですみません)。結局、良いと思えた辞典はこれでした。


用例でわかるカタカナ新語辞典

用例でわかるカタカナ新語辞典
  • 作者: 学研辞典編集部
  • 出版社/メーカー: 学習研究社
  • 発売日: 2003/03

すみません、↑この一冊だけです。本当はいくつかの辞典を並べて「これはこういういいところが……」とやりたかったのですが、先ほどのような目で見ていったら、他の本はひとつも良いと思えず、オススメできなかったのです。

この辞典は上記チェックで最高!という形ではないのですが(えええ)、用例がついているだけあって「わからせよう」という気持ちが伝わってきます。「インターネット」の説明なんて図がついていて、かなりイメージしやすい。値段(リンク先参照)もまあ、さほど高くなく、同価格帯の辞典の中ではお値打ちなのではないでしょうか。

2003年発刊ですが、これより新しいものがそれほど良いとも思えませんでした。これを暫定チャンピオンとして、また良い辞典が見つかったらご報告したいと思います。(2004/10/20記)