おまえなんか、訳してやる!

どんどん一言で 訳していくサイトです。 今567語くらい。

「RSSを購読」になってしまう考

ネットで「RSSを購読する」という表現がよく使われています。はてなRSSでもヘルプやフィードページで使われていますが、これがもはや誤用ではないとすると、「購読」という言葉の意味は変わってしまったことになります。

RSSフィードは通常タダ。「買って読む」が「購読」の意味ですから、これが「定期的に読む」といった意味合いに転じていることに違和感を持たれる方も多いでしょう。もし「購入」が「定期的に手に入れる」意味になってしまったら、かなり違和感があります。

あまり“単行本を購読する”と言う機会はなく、「購読」は新聞や雑誌を定期的に読む文脈になじんでしまったのでしょう。「無料購読」という言葉も考えてみれば変ですが、google:"無料購読"で現在約346,000件と、わりあい使われています。

ちなみにgoogle:"無料購入"]はおかしいと感じる人が多いのか、約53,100件でした(検索結果も『送料無料 購入方法…』といった文章に引っかかってしまったものが多い)。[google:"無料取得"]は矛盾は無い言葉ですが「取得」に「無料」を付け加える意味が薄いためか、約30,600件とさらに低調。無料で配るほうは[google:"無料配布"]が約2,210,000件、[google:"無料提供"が約869,000件と、とくに言葉使いに困らない印象です。

これは「購読」以外で“定期的に読む・取得する”の意味のうまい言葉が見つからないという問題だと分かってきました。

「新聞を取る」「出前を取る」というように、漢字熟語を使わずRSSを取る」と言うことはできると思います。日本語でも矛盾が生じない表現があったわけです。が、「取る」では意味が多すぎて誤解されたり、動詞は「(漢字熟語やカタカナ語)+する」の形でないとビジネス文書などで使うのが不安という「○○する症候群(私の命名)」の懸念がありそうですから、たぶん普及しないでしょう。

あとは「RSSを受信する」「RSSリーダーに登録する」「お気に入りに入れる」など、場面に応じて言い換えることになります。しかし使い勝手はイマイチ。

このRSSの「購読」、元の英語はsubscriptionで、中国語では「訂閲(订阅)」が使われているようです。閲(えっ)することを訂(さだ)めるという意味でしょうか。

日本でも「訂閲」を採用するか、または「取読する(=取って読む)」というような造語をすれば、矛盾のない使いやすい訳語の誕生となるわけですが、まあ難しいでしょうねえ……。

私は「RSSを購読する」を見かけるたびにモゾモゾした気分に襲われるので、どちらかと言うと「購読はおかしい!」と叫びたいほうなのですが、その結果万一、「RSSをサブスクライブする」というカタカナ語が定着してしまったらおま訳的に最悪です! ああ、それだけは避けたい!


(追記)はてブのコメントでsouryuuseiさんが同じ問題の記事を示してくださったのでリンクさせていただきます。有料化の布石か、というのは私も感じましたうんうん。