責任を取らされる言葉になった「不適切」
もしかするとお若い方はご存じないかもしれませんけども、「不適切」という言葉が定着したのは1998年、クリントン大統領とモニカ・ルインスキーの不倫事件で「不適切な関係(a relationship that was not appropriate)」が流行語になったときです。
その頃の私は「不適切」は変な言葉じゃない?「不適当」でいいんじゃない?と感じていまして、同じ意見も目にしました。
しかし言葉は生き物ですから、否定的な事象をダイレクトに表現することを避ける
(不適切な関係 - Wikipedia)際に、「不適当」よりも「不適切」が使われるようになっていきます。“不適当というほどではないけれど、まったく適切というわけではなかった”と言い訳したいんじゃないかと思います。
ですからクリントン大統領はこの件で辞任しませんでしたし、なんの責任もとりませんでした。ところが、8年後の今、「不適切」はそれを認めることで責任をとらなければいけないキーワードに変化したようです。
元々ですね、「不適当」という言葉も“不当というほどではないけれど、まったく適当というわけではない”状態を指す言葉だと思うのです。
その上に「不適切」という状態を持って来ても、「否定的な事象をダイレクトに表現することを避ける」ための言い回しですから結局は「不当」に近い意味合いになってきてしまうんだと思うんですよね。
そんなわけで、我々はまた“不適切というほどではないけれど、ちょっと褒められないかもしれない行為だったかも…”と言い訳するための新しい言葉を作る必要があるようです。
既存の熟語でありますかね。不完全な、だとちゃんと処理してないみたいですしね。「非最適」かな。「不完璧」?