おまえなんか、訳してやる!

どんどん一言で 訳していくサイトです。 今567語くらい。

ゆとり世代の上の世代の呼び方を考える2(プレッシャー世代やめました)

先月、私の胸先三寸で決定したネーミングがこんなことになるとは。前回の「プレッシャー世代」の記事ネタりかYahoo!ニュースのトピックスで紹介されて15万アクセス超。現在Yahoo!ブログ検索 - 「プレッシャー世代」の検索結果は1000件越え、google:"プレッシャー世代"は95,700件となっております。

今ブログ検索で「プレッシャー世代」を見てみると、その後一気に使われなくなっていて定着しない雰囲気満々ですが、いったんこれだけ広まりますとそれなりに言葉の一人歩きもあるでしょう。単語「プレッシャー世代」はネタりかさんの記事で再定義されていることもあり、私の手を離れた感があります。

まあそれはそれとしまして、おかげで色々参考になるご意見をいっぱい頂けましたので、地味目に提案の修正などをしていきたいと思います(時流を無視する自己満足型運営)。ご意見をくださったみなさんありがとうございます。

特に問題に思ったのは「プレッシャーは感じていない」という多数の声でした。うちにトラバをくださった方は肯定的なご意見が多かったのですが、それ以外のほうが圧倒的に多かったのでそちらもかなり目を通しています。

「個人差があるので当然では?」「当事者は貼られたレッテルに反発するものなのでは?」「プレッシャーに強いから感じないのでは?」という見方を加味してもですね、あまりにも多く感じました。

反対意見が多くても私の考えが変わらなければ変更はいたしませんが、これについては考え直しました。

私はこの世代について「幼年期以降を不況下で過ごし、大人になったら超高齢化社会を支えてないといけないと教えられ、多感な時期に大震災・オウム真理教事件・失言総理などを目にして未来にリアルな絶望感を抱いたに違いない」という想像から「プレッシャーのかかった世代」としたわけですが、あまりにも社会のニュースに目を向けすぎていたのかもしれません。

強く同調していただいたご感想も多数あったのですが、当事者のみなさんの多くはそうした社会的な事件は人ごとであって、人格形成に強く影響したとは自覚されていないようです(影響あるとは思うのですが)。

ゆとり教育の先鞭がつけられ、受験も就職も多くの場合は前の世代より楽であり、「むしろプレッシャーがかかっていない世代」だとなれば、プレッシャー世代という命名は上手くないでしょう。(上手いと言ってくださった方、すみません)

また「プレッシャーをかけられてきたからプレッシャーに強い」という理屈も考えて見れば変で、競走馬なんかノビノビ育って無理なく変化に馴らされたちょっとズブいぐらいの馬のほうが大舞台に強いですよね。これも見直します。私の考察のいい加減さがバレバレですが、前回よりこの世代の実像にせまっていると思います。

まず82〜86年度限定のネーミングは無いとしても、この世代にもすでに世代名がついていることについて、ついでに命名を考えていたポスト団塊ジュニアも含めて分かったことをまとめてみましょう。

世代名 生まれた年代 備考
就職氷河期世代 1970年代〜1980年代初頭 就職氷河期に就職活動を行った世代。はっきり83年生まれまでする記述も。1994年から2004年に学校を卒業した人という定義もある。ロストジェネレーション・失われた世代(もともと1920〜30年代のアメリカの作家などを指す)などとも。
真性団塊ジュニア 1972〜81年 三浦展による定義で出生数の過半数団塊世代の子どもによって占められる世代。
ポスト団塊ジュニア 1975年〜1980年代初頭 83年までとする記述もありますが、就職氷河期世代がそこまでという判断なのかもしれません。とはいえ就職氷河期世代も幅があり、どこで「ポスト団塊ジュニア」が終わるかについてはあまり意味は無いと思います。
無味無臭世代 1975〜79年 この定義は2ちゃんねるの書き込みより。就職氷河期世代と同義という使われ方も。
無気力世代 1980〜84年 この定義は2ちゃんねるの書き込みより。それ以前の出典は無い模様。「無気力世代」は1980年代に生まれた若者世代を指すドイツのヌル・ボック世代の訳語など、他の文脈でも登場。
松坂世代 1980年度 「自分は松坂世代だと思っていた」というご意見多かったです。特定のスポーツ選手から「○○世代」と言うことはありますが、それしかくくりが無いというのは、世代論があまり語られなかった証拠でしょう。
谷間世代 1981年〜1982 「谷間世代」は様々な文脈で用語化する普通名詞で、この場合はサッカー日本代表における1981〜2年生まれの世代(1979〜80年生まれが黄金世代)。私は大一番では強いと見ています。
キレる17歳世代 1982年度 もう25才なので言われることもないでしょう。
ゆとり世代 1970年代後半生まれ以降 1980年から段階的に実施されたゆとり教育を受けたということで、広義のゆとり世代に含まれます。私は80年代初頭生まれ以降に大一番で実力を発揮できる、プレッシャーに強い傾向があると思いますが、競争社会の反省と心のケアが重視された「ゆとり」の風潮がそれを育んだのかもしれないと考え始めています。
ドラゴンボール世代 不定 ドラゴンボールが好きすぎる世代。よく使われているようで無視できませんでした。ドラゴンボールの雑誌連載は1984年〜1995年。アニメはドラゴンボールGTまで含めて1986年〜1997年。実際にはその上下の年齢層にも広く知られているが、70年代後半〜80年代後半生まれあたりを指すのが妥当でしょうか。


80年代初頭(82年)〜86年度世代の特徴についても前より分かってきた気がしますので、まとめてみましょう(偏見を)。

  • 上は「失われた世代」で、下は「ゆとり第一世代」。「端境期」「すき間」の世代の印象。
  • あまり話題にならない。
  • それほど話題にもなりたくない。むしろ放っておいてほしい。
  • 受験戦争や詰め込み型の教育が反省されはじめ、ゆとり教育の傾向は現れていた。
  • 多くの場合、受験や就職は上の世代ほど厳しくなかった。
  • 幼少期からビデオ・ゲーム機に触れ、サブカルチャーを満喫。ゲームを中心に漫画・アニメ・映画DVDなどのメディア消費に慣れ目が肥えているし、そのことを自負もしている。
  • 面白いことを言えないわけではないが、なにか面白いことをしなきゃ、というサービス精神(強迫観念)は上の世代より弱い。
  • 「負け組」「役立たず」になってしまうことに対する漠然とした恐怖感は強い。
  • 子供の頃からニュースなどで「ダメな大人」をこれでもかと見て来た。
  • 日本や社会に対する深い絶望感が根底にある。
  • 「小さな幸せ」で大満足できる。
  • 「ウザさ」には超敏感。
  • 大きくても小さくても、具体的な目標を設定して達成するのが得意。
  • あまり考えすぎないようにしている。
  • 決断と断行が重要である。
  • 気持ちの切り替えが早い。
  • 空元気が得意。
  • 学生時代からケータイに慣れ親しむなど、上の世代よりコミュニケーション能力は高い。下の世代には負ける。
  • 上のポスト団塊ジュニア世代から見るとドキッとするようなキツい言動があるが、伝えるべきことを遠慮して言わないタイプのコミュニケーション不全は少ない。
    • むしろポスト団塊ジュニア世代は内省的できちんとコミュニケーションがとれていないように見える。
    • さらに上の団塊ジュニア世代は空気を読まないか、読んでもあえて無視*1してくるので手に負えない。
  • 醒めた性格。良く言えばクール。悪く言ってドライ。
  • 我慢強く、たいがいのことはスルーできる。
  • スルーできないことに出くわしたときのキレ方は、戦後最狂。
  • 大一番でプレッシャーに強い。普段はむしろ弱い。

はい、まあ、当たるも八卦

1984年度生まれの前後あたりでも世代的な断絶を感じる」というご意見がいくつかありまして、詳しく見ていくにつれ、それも分かる気がしました。

やっぱり日本の経済成長期のシステムがもうダメで、変わらなきゃいけないという時代になったのが大きくて、上の世代同様、日本の先行きに非常に暗いイメージを持ってます。

それですぐ上の「ポスト団塊ジュニア」の人たちはナイーヴというかちょっと子供っぽい自己完結性があって、お先真っ暗なムードの中でコギャル化するとか、風に吹かれて(=ボーっとすごす)とか、けっこう投げやりな世相を醸し出していて。そういう享楽的な陶酔から一歩引いて自分は醒めていたいっていうのが1998年〜2000年の「ガングロ」「ヤマンバ」だったんじゃないかなあ、と思うんです。カブキ者の精神で。82年度生まれの「キレる17才」はやっぱりある程度当たっていて、世相のストレスがのしかかっていたのではないかと。彼らの就職自体もまだ相当厳しかったはずです。

それをすぎて、たぶん84年度生まれあたりの人から、なにかふっきれた自然体を取り戻して、いよいよ空元気も極まっていったんじゃないかと推測しました。まあでも「すき間の世代」ってことで、結局82〜86年度あたりでまとめちゃいたくなるんですけども。

他の世代論を見ていて思ったのは1950年代から60年代(1955〜64年とも)生まれの「断層の世代」に近い雰囲気がありますね。「断層世代」は上の「団塊世代」と下の「新人類」の陰に隠れ気味で、戦後の大量消費社会で育って、ウォークマンにとびつくなど新しい消費をリードして、オタク第一世代でもあり……という世代だそうです。ちょっと面白くありませんが「第二断層世代」でもいいかんじ。

今なら「スルー世代」がいいかなと思います。多くの人が受験や就職を華麗にスルーできて、たいがいのことはクールにスルーできて、世代論からもスルーされてきて、どちらかというとこのまま放っておいてほしいスルー世代。

命名ばかりで福島瑞穂の芸風みたいになってきましたが。いろいろ熱心なご意見・ご提案、本当にありがとうございました。

2008/8/17追記

上記のようにいろいろ考えたわけですが、その後もこの話題は「プレッシャー世代」で語られることが多いです。命名し直したものの、この日記の読者さんでも「スルー世代」ではピンと来ないと思いますので、私も今後この話題に触れるときはプレッシャー世代うんぬんと書くかもしれません。当事者たちは自覚がなくても、やはりプレッシャーのかかっている世代なのではと思わせる事件事象もあり、やはりプレッシャー世代でそれほど外れてなかったのではという気持ちもあります。世間一般的には未だにこれといった呼び名は出ていないようで、引き続きご自由にお呼びください。



*1:KYAM